ロービジョン関連情報
ロービジョン関連用語ガイドライン
ロービジョンに関連する用語のガイドラインです。
序
日本ロービジョン学会は、医療、教育、福祉等、幅広い分野の会員から構成されているため、各分野によって用語の慣用的な意味が一致しないことによる学際的交流の妨げを減らし、研究成果の発表や討論を円滑に行うことに寄与する目的で、2000年11月に、用語委員会が設置されました。
委員会の役割は以下の通りです。
- ロービジョン関連の用語を網羅的に検討するのではなく、定義、用法に混乱を招く可能性があると思われる用語に限って検討する。
- 専門分野の学会等で学術的に定義が確立しているものは、その定義を確認する。
- 上の定義が一般に用いられている慣用的な意味と異なる場合は、その旨の周知を図る。
- 学術的な定義が確立していないものや、曖昧なものについては、当学会内での定義、用法を統一するための指針を示す。
これに沿って、当時の用語委員5名で検討した結果を、2006年9月に冊子として発行し、HPにも掲載しました。
2007年4月からは福祉分野の新委員2名を加えて、内容の充実を図りました。2008年8月には、障害者自立支援法の施行および学校教育法等の一部改正に伴い、関連用語の変更を紹介すべく、用語ガイドラインのHP掲載分を改訂いたしました。2009年8月に眼科医の委員1名を追加し、新たに「偏心視域」、「EVP」、「EVD」の3語と照明関係の用語を検討しました。結果、前3語を加える改訂を行います(変更部分を末尾に表記しています)。今後も、皆様からのご意見を受けて修正を加え、より良いガイドラインの作成に向けて取り組みたいと考えております。ご活用の上、ご意見、ご質問、検討用語追加のご要望等がございましたら、委員会のメールアドレス: low-vision@freeml.com へ、お送りくださいますよう、よろしくお願い申しあげます。
2010年3月 日本ロービジョン学会用語委員会 委員一同
目次
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1. 「視機能」に関する用語
視力(しりょく)
対象の細部構造を見分ける能力。眼科領域では最小分離閾で表すが、最小可読閾でもかまわない。国際眼科学会では、その測定にランドルト環を用い、識別できる最小視角(分)の逆数をもって視力とする小数視力が採用されている。
<参考>「視力測定法」
視力の測定法には次の4種がある。
- 最小視認閾:視野内に一つの点、あるいは一本の線が存在することを認める閾値
- 最小分離閾:二点または二本の線が分離して見分けられる閾値
- 最小可読閾:文字または複雑な図形を判読または弁別する閾値
- 副尺視力 :直線(または輪郭)のずれを見分ける閾値
小数視力(しょうすうしりょく)
識別できる最小視角(分)の逆数によって表された視力。
分数視力(ぶんすうしりょく)
検査距離を分子とし、識別できる最小視角が1分の人(小数視力1.0の人)がその視標をかろうじて識別できる距離を分母として表された視力。
対数視力(たいすうしりょく)
識別できる最小視角(分)の逆数(小数視力値)の常用対数によって表された視力。間隔尺度に近似する。
logMAR【minimum angle of resolution】視力(ログマーしりょく)
識別できる最小視角(分)の常用対数によって表された視力。視標の視角が等比級数(公比は10の10乗根)で作成されたlogMAR視力表では視力値は間隔尺度になっているため、視力を定量的に評価するのに適している。
<補足>視力の数値のあとにlogMARを付けて表現する。例)0.3 logMAR
矯正視力(きょうせいしりょく)と裸眼視力(らがんしりょく)
矯正視力は屈折異常を矯正して測定した視力であり、裸眼視力は矯正なしで測定した視力である。
<補足>所持眼鏡による視力は必ずしも最善の矯正による最高の視力ではない。
中心視力(ちゅうしんしりょく)と中心外視力(ちゅうしんがいしりょく)周辺視力(しゅうへんしりょく)
中心視力は中心窩で見たときの視力であり、中心外視力は中心窩以外の部位で見たときの視力である。中心外視力は周辺視力ともいう。
両眼視力(りょうがんしりょく)と片眼視力(へんがんしりょく)
両眼視力は両眼を用いて測定した視力であり、片眼視力は非測定眼を遮蔽して一眼で測定した視力である。
両眼開放視力(りょうがんかいほうしりょく)
両眼を開放した状態で測定した片眼ずつの視力をいう場合と、「両眼視力」と同じく両眼を用いて測定した視力をいう場合がある。前者の測定には偏光板等を利用する。
<補足>当学会では、両眼を用いて測定した視力は「両眼視力」と表現し、「両眼開放視力」は両眼を開放した状態で測定した片眼ずつの視力の意味で用いることを推奨する。
遠見視力(えんけんしりょく)と近見視力(きんけんしりょく)
遠見視力は視標を遠方に置いて測定した視力であり、我が国では5mが基準である。近見視力は視標を近方に置いて測定した視力であり、我が国では30cmが基準である。
字づまり視力(じづまりしりょく)と字ひとつ視力(じひとつしりょく)
字づまり視力は標準視力表等のように多数の視標が配置されている視力表を用いて測定した視力で、並列視力ともいう。字ひとつ視力は視標をひとつだけ提示して測定した視力で、単一視力ともいう。
対比視力(たいひしりょく)
種々の輝度コントラストの視標を配置した視力表で測定された視力。
縞視力(しましりょく)
識別できた縞の幅を視角に換算して求めた視力。縞刺激には正弦波状のものと矩形波状のものがある。空間周波数特性の測定、preferential looking (PL) 法(選択視法,選好注視法)や視運動眼振による視力測定等に用いられる。
<参考>「視運動眼振による視力測定」
眼前で白黒の縞模様を動かし視運動眼振を誘発できた最小の幅の視角、あるいは誘発された視運動眼振を止めることができた最小視標の視角から、視力を求める方法がある。
夜間視力(やかんしりょく)
暗順応下で測定された視力。
動体視力(どうたいしりょく)
動いている対象を識別する視力。視標が前後方向に動く状態で測定されたものと、振り子のように左右方向に動く状態で測定されたものとがある。
視野(しや)
一般的には、一点を固視したままで見ることのできる範囲をいう。正確には視覚の感度分布として表される。
中心視野(ちゅうしんしや)と周辺視野(しゅうへんしや)
中心視野は一般的に中心30度以内の視野であり、周辺視野はそれより外側の視野である。
注視野(ちゅうしや)
頭部を固定して眼球運動により視標を直接見ることができる範囲。一般的に単眼で測定するが、両眼で測定することもある。
有効視野(ゆうこうしや)
注視点とその周辺領域で認知に寄与する部分をいう。視覚情報を検索、弁別、処理ないしは貯蔵しうる注視点とその周辺領域、すなわち、ある与えられた視覚的な仕事を遂行するのに必要な情報を取り入れている範囲を指す。主に心理学分野で使われる用語である。
視能率(しのうりつ)
視機能障害について、正常者の機能を100、その機能を失ったものを0として評価したもの。視力、視野、眼球運動について数量化がされていて、総合的な視能率の計算方法も決められている。
日常視(にちじょうし)
裸眼または常用の眼鏡あるいはコンタクトレンズによる矯正のもとで両眼を開放した状態での日常生活における見え方のことをいう。「日常生活視力」や「日常生活視野」等として評価する。機能障害(impairment)としての視力や視野の評価とは異なり、能力障害(disability)の観点から視機能を推定、評価するときに用いる。乳幼児や高次機能障害等で視力や視野を機能的に評価できない場合、日常の行動パターンや認識パターンから推定される日常視をもって視機能を評価する。
最大視認力(さいだいしにんりょく)
視距離に関わらず、近見試視力視標で識別できる最小の視標とそのときの視距離を示したもので、「最小可読視標」ともいう。被検者の屈折とその矯正、および調節とその補正、ならびに標準検査視距離や単独か否か等、用いる視標の種別については特に考慮されていない。そのため、これは最大の識別力や最小の識別閾を示す「視力」に相当するものではない。主に教育の分野で用いられており、視覚に障害のある児童生徒の読書文字サイズを決める手がかり等に利用されている。
「補助具」に関する用語
補助具(ほじょぐ)
身体機能の障害を補い、日常生活又は社会生活を容易にし、自立と社会参加を可能とするための道具や手段等の総称。かかる目的をもって製造者が特別に作ったものに加えて、既製品として存在する物品またはシステムがかかる目的をもって用いられる場合も含む。
<参考>「補装具《ほそうぐ》」および「日常生活用具《にちじょうせいかつようぐ》」
障害者自立支援法に規定する「補装具」および「日常生活用具」は、いずれも厚生労働省告示によって種目が規定されているが、前掲の定義による「補助具」のすべてを含むものではない。また、特に日常生活用具の種目および具体的な製品については、自治体ごとに状況が異なるのが実態である。したがって、このような背景を理解した上で特に行政用語としての「補装具」および「日常生活用具」という意味で用いる場合を除いて、一般用語・学術用語として「補装具」および「日常生活用具」を用いるべきではなく、「補助具」を用いることが望ましい。以下のように分類する。
視覚補助具
-
光学的視覚補助具
-
レンズ
- 屈折および調節補正レンズ
- 拡大鏡(縮小鏡を含む)
- 単眼鏡および双眼鏡
-
光吸収フィルタ
- カラーレンズ
- フォトクロミックレンズ
- 偏光レンズ
- その他
-
その他の光学的視覚補助具
- プリズム
- 反射鏡(拡大のための凹面鏡等)
- ピンホール、スリット等
- その他
-
レンズ
- 非光学的視覚補助具
視覚補助具以外の補助具
視覚補助具(しかくほじょぐ)
ロービジョン者の保有視機能を有効活用するための補助具の総称。光学的視覚補助具と非光学的視覚補助具に大別される。
光学的視覚補助具(こうがくてきしかくほじょぐ)
視覚補助具のうち、主として光学系を用いたものの総称。レンズ、光吸収フィルタ、その他の光学的視覚補助具に分類する。
<補足>例えば、「もっぱら光源の光線束を収束させる目的でレンズが用いられている照明器具」等は、光学的視覚補助具には含めない。
<参考>「光学系《こうがくけい》」
物体の結像等を行うため、反射面、屈折面等を、光軸を基準として配列したもの。
レンズ
少なくとも1つが平面ではない2つの面をもつ媒質またはその組み合わせで作られ、屈折作用を利用して対象物からの光線束を収束または発散させる作用をもつもの。レンズの屈折力は焦点距離(m)の逆数で表され、その単位はD(dioptre,diopter,dioptry)である。また、その読み方にはJISで定めるディオプトリのほか、ジオプター、ジオプトリーなどがある。屈折および調節補正用レンズ、拡大鏡(縮小鏡を含む)、単眼鏡および双眼鏡の3つに分類する。
<補足>慣用として、上記のレンズの定義を満たさないものであっても、レンズの呼称を用いるものがある。
(例1:屈折度数を有さない光吸収フィルタ=カラーレンズ等と呼称)
(例2:回折レンズ=その他の光学的視覚補助具に分類)
<参考>「弱視レンズ《じゃくしレンズ》」の呼称
レンズを用いた光学的補助具を「弱視レンズ」と称する成書が多いが、定義が一定せず、慣用的に用いられているものと考えられるので、学術用語として用いることは避けるべきである。
屈折矯正(くっせつきょうせい)および調節補正(ちょうせつほせい)用レンズ
屈折矯正や調節補正の目的で用いる、屈折度数をもった眼鏡レンズおよびコンタクトレンズ。
<参考>「眼鏡《がんきょう・めがね》」
JIS(T7330)によれば、「眼の測定、補正および/または保護のため、または見掛けをかえるために使用するレンズ等を、眼球に接触せずに、眼の前方に掛けるために装用するもの」と定義される。一方、薬事法に規定する医療用具としての「眼鏡」は視力補正用に限定され、障害者自立支援法に規定する「補装具」の一種目としての「眼鏡」は、矯正眼鏡、遮光眼鏡、コンタクトレンズ、弱視眼鏡の4種類を指す。「眼鏡」という呼称は、一般用語として、概ねJISの定義によるところのものが広く定着していると思われるので、単に「眼鏡」と表記した場合には一般用語としての眼鏡を指すものとしてよいと考える。学術用語としては、「眼鏡」の呼称は、上述のような種々の意味合いを持つことを理解したうえで、誤解を生じないように注意して使用すべきである。
拡大鏡(かくだいきょう)【縮小鏡(しゅくしょうきょう)を含む】
視対象の拡大または縮小された虚像を見るための焦点結像系を有するレンズ。
<補足>拡大鏡(縮小鏡を含む)について、保持・装用の形式や照明光源の有無等により分類を加える場合があるが、分類法や呼称はいまだ確立しておらず、今後の検討課題である。
<参考>「ルーペ」の呼称
「ルーペ」は、一般用語として、また、特定の商標として用いられているが、単に「ルーペ」と表記した場合に何をさすものか曖昧であるので、学術用語としては「拡大鏡」を用いるべきである。
単眼鏡(たんがんきょう)および双眼鏡(そうがんきょう)
対象物の眼への入射角を拡大(または縮小)して見る器械で、通常、焦点非結像系の光学系を持つもの。ケプラー式とガリレイ式がある。
<参考>「弱視眼鏡《じゃくしがんきょう》」の呼称
障害者自立支援法に規定する補装具の一種目である「眼鏡」のなかの1つであり、「掛けめがね式」と「焦点調節式」がある。一般には、ガリレイ式単眼鏡、ケプラー式単眼鏡などが「弱視眼鏡」として給付されることが多いようであるが、その他の形式の補助具も、自治体によっては「弱視眼鏡」として給付されている場合がある。したがって、単に「弱視眼鏡」と言った場合にそれが何を指すものか明らかでないので、一般用語・学術用語として「弱視眼鏡」を用いるべきではない。
光吸収フィルタ(ひかりきゅうしゅうフィルタ)
入射光の特定波長範囲または特定比率の吸収をするように設計された光学素子。視覚補助具としては眼鏡の形態をとる場合が多く、カラーレンズ、フォトクロミックレンズ、偏光レンズ、および、これらの性質を合わせ持ったレンズが用いられる。その他に、レンズの性質を持たないシート(セロファンなど)がある。
<補足1>光学の用語としての「フィルタ」とは、それを通過する光束の分光分布を変化させる作用を持つ光学素子のことであり、可視光線およびその近傍の波長の光に対するものを「光吸収フィルタ」と呼称する。
<補足2>光吸収フィルタの分類は、光学的性質による分類の他に、使用目的によるものや、流通上の諸法令によるものなど、さまざまなものがある。
カラーレンズ
透過において色(グレーを含む)が付いたレンズ。
フォトクロミックレンズ【調光レンズ(ちょうこうレンズ)】
入射する光線の強度や波長によって、視感透過率特性が可逆的に変化するレンズ。
偏光レンズ(へんこうレンズ)
入射光線の偏光面方向によって吸収が異なるレンズ。
<参考1>「サングラス」
光吸収フィルタを用いた眼鏡を総称する一般用語。家庭用品品質表示法に基づく雑貨工業品品質表示規定では、中心から15mmの範囲に著しい歪みがなく、平行度が0.166D以下のものをサングラスと称し、この基準を満たさないものをファッショングラスという。
<参考2>「遮光眼鏡」と「色めがね」
従来、身体障害者福祉法による補装具の品目に「遮光眼鏡」および「色めがね」が掲げられており、前者は主として羞明の軽減を目的として、後者は主として整容上の必要から、それぞれ給付されるものとされていた。しかし、2006年4月の障害者自立支援法施行にともない、同年10月から「色めがね」は補装具の品目から除外されることになった。したがって、「色めがね」は今後、行政用語としての扱いがなくなり、学術的にもこれを定義して用いる意義を見出せないため、ここでは定義しない。「遮光眼鏡」は、補装具としての対象疾患とレンズの種類の限定は学術的根拠に乏しいため、以下に学術的立場からの定義を提案する。
遮光眼鏡(しゃこうがんきょう)
グレアの軽減、コントラストの改善、暗順応の補助等を目的として装用する光吸収フィルタを用いた眼鏡。屈折度数を有するものを含む。
<補足>
視覚補助具としての遮光眼鏡とは別に、溶接作業等に際して眼の保護の目的で装用する産業用の遮光眼鏡がある。
その他の光学的視覚補助具(こうがくてきしかくほじょぐ)
光学的視覚補助具のうち、レンズおよび光吸収フィルタに分類されないもの。プリズム、拡大反射鏡、ピンホールなどが含まれる。
プリズム
光学的には、平行でない平面を2つ以上もつ透明体(JIS Z8120-I52)と定義される。ただし、眼鏡に用いられるプリズムレンズがすべてこの定義をみたしているとは限らず、入射した光が2つの面で屈折し収束発散せずに進路をかえるような効果をしめすものを総称して「プリズムレンズ」という。
非光学的視覚補助具(ひこうがくてきしかくほじょぐ)
視覚補助具のうち光学系を用いないものの総称。
- 相対的文字拡大法(例:大活字本,拡大コピー,パソコン用拡大ソフト類,拡大文字や表示をもつ各種の物品)
- 照明光および光のコントロール(例:各種照明装置,マスキング,帽子,傘)
- 書見台
- 書字用補助具(例:太い罫線の用紙,太いフエルトペン,罫プレート)
- 拡大読書器
- その他
<補足>機構として光学系を含む補助具であっても、その光学系の光軸が視軸と一致しないもの(例:拡大読書器、集光レンズ付ライト)は光学的視覚補助具ではなく非光学的視覚補助具に分類する。
視覚補助具(しかくほじょぐ)以外の補助具
補助具のうち、ロービジョン者の保有視機能を活用することを意図しないもの。感覚代行補助具がその主体となる。
- 定位および移動(歩行)補助具(例:杖,盲導犬,各種の電子的歩行補助具,全地球測位システム《GPS》の利用)
- 各種の音声出力装置つき製品およびパソコン用音声ソフト類
- 携帯電話等の携帯端末
- ピンディスプレイなどの触知出力装置および触覚を利用した各種製品
- 整容上装用する眼鏡等
- その他
その他の用語
弱視(じゃくし)
「弱視」には「医学的弱視」と「社会的弱視」がある。
医学的弱視(いがくてきじゃくし)
乳幼児期の視機能が発達していく過程における視性刺激遮断が原因で、正常な視覚の発達が停止あるいは遅延している状態。
<補足1>斜視弱視、屈折異常弱視、不同視弱視、形態覚遮断弱視に分類される。
<補足2>早期に適切な対応をすれば、視機能の向上が可能なことが多い。
社会的弱視(しゃかいてきじゃくし)
視覚障害はあるが、主に視覚による日常生活および社会生活が可能である状態。
<補足>このうち、とくに「教育的弱視《きょういくてきじゃくし》」という場合は、「視覚障害はあるが、主に視覚による教育が可能である状態」をいう。文字や事物が見えにくく、学習指導や学校生活の上で視覚の活用に特別な配慮を必要とする。学校教育法施行令第22条の3における盲学校就学手続き上の原則からは、「両眼の視力がおおむね〇・三未満又は視力以外の障害が高度であるが、拡大鏡等を使用すれば文字等を認識することが可能である程度のもの」と解釈される。
<参考1>「社会的盲《しゃかいてきもう》」
視覚障害があるために、主に視覚以外の感覚による日常生活または社会生活を送る状態をいう。
<参考2>「教育的盲《きょういくてきもう》」
「視覚障害があるために、主に視覚以外の感覚による教育をすべき状態」をいう。学校教育法施行令第22条の3では、視覚障害者の障害の程度を「両眼の視力がおおむね〇・三未満のもの又は視力以外の視機能障害が高度のもののうち、拡大鏡等の使用によつて*も通常の文字、図形等の視覚による認識が不可能又は著しく困難な程度のもの」と規定している。(*原文のまま。「よつても」は「よっても」の意。)
<補足>学校教育法等の一部を改正する法律の施行(平成十九年十二月二十六日)に伴って,関係告示における用語が整理された。「盲学校」「盲者」等の用語が用いられないことになった。改正された主な用語を以下に記す。「盲学校,聾学校,養護学校→特別支援学校」「盲者→視覚障害者」「特殊学級→ 特別支援学級」「特殊教育諸学校→特別支援学校」「盲学校,聾学校及び肢体不自由者又は病弱者を教育する養護学校→視覚障害者,聴覚障害者,肢体不自由者又は病弱者である児童又は生徒に対する教育を行う特別支援学校」
現職(げんしょく)
現在従事している職務(職業)。ただし、職を離れていても、病気休暇や年次休暇等のように、休暇取得後の就労継続が身分的に保障されている場合にも該当する。
原職(げんしょく)
かつて従事していた元の職務(職業)。休職(休暇と違い長期にわたり連続して職を休むこと)、解雇、配置転換等により職を離れた場合に該当する。このような場合に元の職務(職業)に戻ることを「原職復帰《げんしょくふっき》(復職《ふくしょく》)」という。
優位眼(ゆういがん)
両眼の視力がほぼ等しい者が両眼視する場合、漠然と背景を捉える側の眼に対して、対象物に視線を合わせて凝視する側の眼をいう。一般には利き眼(目)と同義語として用いられ、どちらか片方の眼を使うことを求められた場合に無意識に用いる側の眼にあたる。
<補足>視機能が良い側の眼が優位眼になる、ということではない。優位眼は視機能の変化によって変わりうるが、常に視機能が良い側の眼であるわけではない。
偏心視(へんしんし)
中心暗点等により、中心窩(中心小窩)以外の相対的に感度の高い網膜部位で見ているが、中心窩がその主視方向を維持している状態をいう。(英語のeccentric viewing, eccentric vision に対応する。)
<参考1>「中心固視《ちゅうしんこし》(中心窩固視《ちゅうしんかこし》)」
中心窩で固視が行われ、中心窩が主視方向をもつ単眼性の状態をいい、英語のcentral fixationに対応する。
<参考2>「偏心固視《へんしんこし》・中心外固視《ちゅうしんがいこし》」
斜視等により、中心窩以外の網膜部位で固視が行われ、この部位が主視方向をもつ単眼性の状態をいい、英語のeccentric fixationに対応する。これは斜視眼が固定された恒常性斜視にみられ、固視眼の中心窩との対応関係を獲得することで固視点となり、主視方向を持つようになったものである。
<補足1>「主視方向《しゅしほうこう》」とは、主観的に真正面と感じる部位で見たときの視方向をいい、通常は中心窩で見たときの方向がそれにあたる。視覚科学の分野では、主視方向を両眼視の場合と単眼視の場合を分けて定義することがあるが、ここでは眼科の固視検査にしたがって単眼視の場合とし、通常では中心窩の視方向に一致するとした。
<補足2>固視の状態については、眼科で行われる固視検査に準じて分類する。すなわち、非検査眼を遮蔽した状態で検査眼に固視目標を投影し、それを網膜のどこで捉えるかによって定義するが、中心窩以外の点あるいは領域で捉えるもののうち、中心暗点等のように主視方向が中心窩に残っているものは「偏心視」とし、斜視等によりその点が主視方向をもつ「偏心固視または中心外固視」とは区別する。
偏心視域(へんしんしいき)
日本眼科学会用語委員会がPRL(preferred retinal locus)の和語と定めた用語。同用語委員会は用語の定義までは規定していない。当学会では,「偏心視時に視対象を捉える網膜領域および視野領域」と定義し,それが網膜か視野かを明記することを推奨する。
<参考>「preferred retinal locus : PRL」
国際的な定義は確立していないものの普及,定着してきている用語である。「黄斑疾患によって中心暗点のできた患者が,偏心視を自分で見つけ,自然に体得し,常用している網膜領域」として命名された。現在,訓練によって身に付けた領域や訓練の目標領域は別の呼び方をすべき,との厳密な意見がある一方で,PRLを視野の側に使うという誤用の例も見られる。この他,黄斑疾患のみか,中心窩の異常は必須か,PRLが中心窩にあるという考えを認めるか,なども定まっていない。このように,定義と用法に混乱を来している。
<補足1>当用語委員会はこのガイドラインにおいて「PRL(preferred retinal locus)」に対応する日本語訳を「偏心視領域(へんしんしりょういき)」と提案したが,日本眼科学会用語委員会の定めた「偏心視域(へんしんしいき)」に従うこととする。
<補足2>PRLにおいて生じている混乱と用語の複雑化を避けるため,日本における「偏心視域」はPRLと同義ではなく,上記定義の如く,より広い概念とすることを提案する。疾患の別も問わず,視神経疾患や頭蓋内疾患にも適用できる。中心窩あるいはそこからの視路,視中枢自体が正常でも,周囲の広汎な異常によって十分な視野が得られない場合には偏心視が起こるため,これらも含む。しかし,「偏心視」の定義が中心窩(中心小窩)以外とされているため,偏心視域も中心窩(あるいは視野の中心)にはないものとする(黄斑疾患等があっても中心窩で見ている場合に「偏心視域は中心窩にある」とは言わない)。
<補足3>上述のような広い定義および用法をもつ「偏心視域」に相当する英語はない。
羞明(しゅうめい)
光が強くて不快に感じたり見えにくい状態になったりする「まぶしさ」を、医学的に症状として表現する場合に、これを羞明という。羞明は正常者においても病的状態においても生じうるものであり、正常者においてはグレアが、病的状態においてはグレアおよびグレア以外の機序が、羞明の原因となる。
<補足1>グレア以外の機序により羞明を生じうる病態として、眼球表面疾患、眼内の炎症性疾患、網膜・脈絡膜疾患、視神経疾患、緑内障、中枢性疾患、精神疾患等がある。
<補足2>「狭義の羞明」として、「三叉神経第一枝の病的な知覚刺激によって反射性に虹彩の血管拡張を生じ、これに光刺激が加わることにより縮瞳に痛みを伴うもの」と定義するものもある。
グレア
過剰な輝度または過剰な輝度対比のために不快感または視機能低下を生じる現象。「不快グレア」と「障害グレア(減能グレア)」に分類されるが、これらは正常者と視機能になんらかの異常を有する者とのいずれにも生じることがあり、それぞれ羞明の要因として関与する。
<参考>「不快グレア《ふかいグレア》」と「障害グレア《しょうがいグレア》(減能グレア《げんのうグレア》」
「不快グレア」は、視野内で隣接する部分の輝度差が著しい場合や、眼に入射する光量が急激に増した時に不快を感じる状態であり、一方、「障害グレア(減能グレア)」の代表的なものはヴェールグレアであり、眼組織において生じる散乱光により網膜像のコントラストが低下し視力低下を来す状態をいう。また、光沢のある印刷面における反射光のために印字が読み難い場合などのような反射グレアも障害グレア(減能グレア)の一種である。これらが同時に生じることもある。
輝度対比(きどたいひ)【輝度コントラスト(きどコントラスト)】
光の強度分布が異なる物体または像の明暗の相違を表す量の一つ。単に「コントラスト」という場合はこれを指す。
<補足>一般的に、コントラスト(輝度比)Cは、C=(Imax−Imin)/(Imax+Imin)
(ただし、Imax:光の強度の最大値,Imin:光の強度の最小値)で表される。
色差(しきさ)
2色がどれだけ異なって見えるかという観測者の知覚する心理量で、均等色空間内の2色間の距離を、色相、明度、彩度の三属性表示に対応した差として表示するもの。
<補足>当学会で色の違いの度合いを問題にする際に、「色対比(色コントラスト)」(下記参照)という用語を用いるのは適当でなく、「色差」を用いるのが適当である。
<参考>「色対比《いろたいひ》(色コントラスト《いろコントラスト》)」
色対比(色コントラスト)は、テスト領域の色が近接する誘導領域の色と相互に影響し、その相違が強調されて知覚される効果、すなわち、ある領域の色がその周囲の色によって異なって知覚される現象をいう。通常、誘導領域の補色がテスト領域に観察される(周囲光の補色があらわれる)ことを指す。
EVP (Equivalent viewing power)
拡大鏡の倍率は,物体と拡大鏡,また拡大鏡と眼との間の距離によって変化するので,拡大鏡の屈折力だけでは決まらない。そこで,観察者が見る虚像の大きさがどの観察者でも同じになるような表示方法として,拡大鏡の屈折力と観察眼の調節力および加入度を合成した屈折力が考えられた。
従来より,2枚以上のレンズを重ね合わせたレンズを1枚のレンズで表現した屈折力は等価屈折力(Equivalent power:EP)と呼称されているが,EVPも算出方法は同じであり,観察者の見え方に重点を置いた用語として誕生した。したがって,EVPの邦訳について,当用語委員会では,EP同様「等価屈折力」と統一することを提案する。
<参考>「等価屈折力」
JIS(日本工業規格)では,等価屈折力を,「遠方の物体に対して実際のレンズによって結像される像と同じ大きさの像を結像する,厚さが無限に薄いレンズの屈折力」と定義している。
EVD (Equivalent viewing distance)
EVPの逆数がEVDであり,拡大鏡によって生じた物体の虚像の大きさと同じ大きさに見えるように物体を眼前に置いた場合の眼からの距離をいう。EVDにも邦訳はないが,当用語委員会では,「等価距離」を提案する。
日本ロービジョン学会用語委員会
- 委員長 守本典子(岡山大学 眼科)
- 委員 簗島謙次(やなしま眼科・北里大学医療衛生学部)
- 委員 永井春彦(勤医協札幌病院 眼科)
- 委員 石子智士(旭川医科大学 眼科)
- 委員 川瀬芳克(愛知淑徳大学 医療福祉学部)
- 委員 大内 進(国立特別支援教育総合研究所)
- 委員 郷家和子(東京都心身障害者福祉センター)
- 委員 田邉正明 日本ライトハウス 視覚障害リハビテーションセンター 養成部)






