日本ロービジョン学会は、我が国における視覚に障害を有する方々へのハビリテーションならびにリハビリテーションに関する学際的な研究および臨床の向上と会員同士および諸外国との交流を目的に、2000年4月に設立された日本眼科学会関連学会です。会員には、眼科医・視能訓練士・看護師などの医療関係者、教育・福祉・労働関連の業務をされている方々、ロービジョン関連機器に携わる企業関係者など様々な職種の方々のみならず、視覚障害を有するロービジョンの当事者やロービジョンケアに関心がある方々も所属しており、2022年5月現在の会員数は約850名となっています。
本学会設立から20年が経ち、当時に比べるとロービジョンケアに関しての認知度が高まりつつあり、眼科領域においては診療報酬や医大生教育にも変化が見られてきました。しかし、ロービジョンケアを実際に行っている施設はまだまだ充分に整備されているとは言えません。ロービジョンケア普及のためには、眼科医療関係者への知識の普及や啓蒙、そして、視覚障害を有する方々に関わる様々な専門機関との連携が重要です。ここ最近は、厚生労働省でも障害者に対する支援を積極的に行うようになりました。ロービジョン者に寄り添った福祉政策がなされるよう、本学会としても積極的に関わっていくことが期待されていると思います。これらのことを念頭に、ロービジョンケアの輪を広げるために行動していきたいと考えています。
近年、眼科領域においては、医療技術の進歩により失われた視覚を回復させる試みが現実のものとなってきました。これらにより、新しく獲得した視機能を日常生活に役立てるための視覚リハビリテーションの研究はこれから重要になってくるものと思われます。また、視覚を補助するロービジョンエイドに関しても研究が進み、これまでの光学的補助具のみならずデジタルデバイスなど様々な装置が開発されてきました。このような医療関連の研究のみならず、視覚障害者教育をはじめ異なる分野の研究成果を統合し、これらから得られた結果を眼科臨床ひいてはロービジョン者に還元する事が本学会に求められているもう一つの側面であり、医療関係者に限定されない本学会の強みだと思います。
本学会が、ロービジョンケアの普及と世界に発信できる研究の推進に貢献できればと考えています。
日本ロービジョン学会 理事長 令和4年(2022年)~
石子智士 (旭川医科大学・医工連携総研講座)