医療機関用チェックリスト

<就労継続の対象となる患者に対して適用>

1)文字処理について

□新聞の文字は見えますか。

 大見出しは?中見出しは?本文は?

□読みたい記事はすぐみつかりますか。

□自分で書いた文字は読めますか。

□書式の決まった書類に記載できますか。

□ルーペ、単眼鏡、拡大読書器を知っていますか。

□音声パソコンを知っていますか。

 

2)パソコン活用について

□視覚障害者の雇用・就業ではパソコンは必須ですが、目を使ってできますか。

□パソコンを持っていますか。

□パソコン画面の読み上げソフトや拡大ソフトを知っていますか。

□それらに補助があることを知っていますか。

□インターネットはできますか。

□Wordはできますか。Excelはできますか。

□他につかえるソフトは何ですか。

3)移動について

□通勤時の移動は問題がありませんか。あれば、それを教えてください。

□信号の色はわかりますか。

□横断歩道で、歩行者用信号は見つかりますか。

□信号のない道を横断できますか。

□階段の昇降はできますか。

□白杖は使っていますか。

□点字ブロックは活用していますか。

 

4)就労について

<在職者に対して>

□いま働いていますか。

□経済面も含めて、困っていることはありませんか。

□病気療養中ですか。

□休職中ですか。

□職場の上司、人事担当と相談しましたか。

□その結果はどうでしたか。

□労働組合はありますか。

□相談しましたか。

□その結果はどうでしたか。

□視覚障害者の就労支援団体を知っていますか。

□ハローワークや障害者職業センターに相談しましたか。

□生活訓練は受けましたか。

□職業訓練について知っていますか。

 

<離職者に対して>

□どのような形で辞めましたか。

□経済面も含めて、困っていることはありませんか。

□再就職したいと思いますか。

□そのための訓練を受けたいと思いますか。

□視覚障害者の就労支援団体を知っていますか。

□生活訓練を受けましたか。

□職業訓練について知っていますか。

□ハローワークに相談していますか。

□雇用保険(失業給付等)の手続きはしましたか。どのような説明を受けましたか。

□健康保険の任意継続制度を知っていますか。(掛け金の負担が少なくて済むことがあるので、手続きについては退職前から職場に相談しておくことが望ましい。)

 

 

5)身体障害者手帳

□持っていますか。

□何級ですか。見せていただけませんか。(コピーをさせてもらう)

□持つ気はありますか。

□手帳を取得することで、公的支援制度を活用できることを知っていますか。

□補装具や日常生活用具などへの援助を知っていますか。

 

6)障害年金

□年金はもらっていますか。

□厚生年金を払っていますか。

□国民年金を払っていますか。

□20歳前の発症ですか。

□障害年金は月給をもらっていても支給されることがあることを知っていますか。

 

コメント:年金の等級は、身体障害者手帳の等級とは関係なく、年金支給の要件基準で判断され、1級は「日常生活の用をたすことができない程度」(身体障害者手帳の概ね1〜2級)、2級は「日常生活に著しい制限を受ける程度」(身体障害者手帳の概ね3級)とされています。

 

7)特定疾患(難病)

 □手続きしていますか。

 

8)診断書

 

□診断書の内容によっては、復職を不可能にすることがあることを知っていますか。

 

コメント:例えば、休職の際に提出する診断書では、復職する時のことを想定して書く必要があります。つまり、単に、「療養を要する」だけでは、療養の結果、目が見えるようにならなければ、復職は認められないと言われることがあります。視覚障害からくる日常生活の支障や社会的不利を軽減する措置(文字の読み書きや移動など、いわゆる視覚リハビリテーション)が必要であることを併記する必要があります。復職に際しては、「就労が可能」であることを読みとれなければなりません。このように、医師の診断書によってその人の人生が左右されることを、医師自身が自覚しなくてはなりません。しかし、一方的に患者や障害者に有利に書くべきでは無論ありません。

 

チェックリスト活用に当たって

このチェックリストは、医療機関において、個別具体的な視覚障害者支援を的確に実施するためのツールとして作成されました。

これを活用することにより、支援対象者である視覚障害者の障害の状況等を正しく理解できるだけでなく、視覚障害者自身も自らの現状を再認識できるとともに、各関係者が支援のための連携のポイントを認識できるようになっています。

この他に、連携・協力して視覚障害者の雇用支援に当たる「ハローワーク等の就労支援機関」「訓練施設」「事業主」用のチェックリストが「視覚障害者の雇用継続支援実用マニュアル」に掲載されていますので、是非、これら他のチェックリストにもお目通しいただけますと幸いです。

なお、「視覚障害者の雇用継続支援実用マニュアル」に関しましては、タートルの会にお問い合わせください。

 

タートルの会  Tel  03-3351-3208

 

        Email  mail@turtle.gr.jp

 

 

CASE 眼科医のコーディネートにより復職した事例

〜「補助具など視覚的配慮をすれば、業務遂行が可能」という診断書で分限免職の壁を乗り越える〜

 

 両眼のレーベル遺伝性視神経症の40代男性。団体職員。家族は妻と子供2人。身体障害者手帳2級(矯正視力は右0.03、左0.01)。

 

 急激な視力低下・中心暗点があり、休職し、ある大学病院の眼科に入院しましたが、治療の効果はみられず、神経内科の治療も併せて受けるようになりました。その神経内科の医師から、ロービジョンケアを行っている眼科医を紹介されました。

 

<当事者団体との連携>

 

 まず、眼科医は、神経内科から紹介されて来院した本人と妻に対して、改めて障害を告知するとともに、障害の受容を図りました。また、最初にタートルの会に繋ぐ際には、本人の希望を確認し、目の前で直接電話をかけました(この方法により、個人情報保護の問題はクリアされます)。タートルの会は、本人や妻の揺れ動く気持ちを支えるとともに、パソコンの活用、安全な通勤、福祉制度の活用、職場での処遇面の問題などを話し合いました。

 

<訓練等>

 ロービジョン訓練については、固視・眼球運動訓練、補助具の選定と訓練、拡大読書器などを使った文字処理の訓練を行いました。

職業訓練については、ロービジョン訓練を終えた後、まず、障害者職業センターでOA講習を受けました。この講習中、タートルの会は、職業センター、地元の障害者雇用促進協会とともに、本人を同伴し、事業主に対して復職の実現をお願いしました。しかし、元々「事業主は見えなくてはできる仕事はない」という立場をとっていましたので、復職を拒否し、本人に対して、さらに1年間の治療専念を命じました。復職を拒否されることはある程度想定されていましたので、本人は、スキルアップのために日本ライトハウスに入所し、本格的な職業訓練に専念しました。

日本ライトハウスでの訓練中も、事業主と復職について話し合いの場がもたれました。改めて復職の希望を伝えましたが、これに対し、事業主から、県の担当者と協議の結果、原職での復職は無理と考えており、最終決定は県が行うと告げられました。

タートルの会は、所定の訓練を終えても、復職を認めようとしないことに対して、職場の最高責任者とそれを指導監督する県知事の双方に対して、視覚障害者の復職・就労事例などを添えて、嘆願書を送付しました。本人も、県知事に対して、復職を願う直訴の手紙を送付しました。

 

<対事業主:診断書>

 一方、主治医である眼科医(A)は、「補助具など視覚的配慮をすれば、業務遂行が可能である」という診断書を提出しました。しかし、事業主はこれを認めず、いわゆる分限免職規定を盾に、事業主の指定する医師2名以上(B、C)の診断書を求めました。その結果、Cの診断書には就労は可能である旨が記述されていましたが、Bの診断書には就労の可否について記述されていませんでした。結局、事業主はAの診断書を認めることを言明するに至りました。

 

<復職>

 

 このようにして、ようやく復職が実現しました。復職後の状況は、極めて良好です。復職に際しては、助成金制度を利用して拡大読書器、スキャナー、音声変換ソフト、デジタルルーペなどの各種機器の整備を行いました。日本ライトハウスの指導員のフォローを得ながら職場環境にも慣れ、最も能力を発揮できる部署に職場定着が図られました。本人の存在は、職員全体に影響を与え、職場のノーマライゼーション実現にも寄与しています。

<まとめ>

 本事例において、特に問題になったのが、診断書と解雇を巡る問題でした。事態を困難にした背景には、事業主に「目が見えなければ仕事はできない」という旧態依然とした偏見があったことです。そして、その事業主が復職を認めることになったのは、ロービジョンケアを行ってきた医師の「就労は可能」とする診断書と、本人の確固たる復職への意志であったといえます。なお、分限免職規定や解雇規定は、雇用継続のための最大限の努力が前提であるものであることを十分ご理解いただきたいと思います。

 また、本事例においては、実際に職場復帰してから事業主が本人の実力を改めて認めることとなり、事業主も積極的に職場改善を図りました。その結果、平成16年度に「職場改善好事例」として表彰されました(*)。このように、企業にとっても視覚障害者の雇用継続はメリットがあり、そのきっかけをつくった第一歩が眼科医の対応であったと言っても過言ではありません。

*(独法)高齢・障害者雇用支援機構発行の「平成16年度障害者雇用職場改善好事例(視覚障害者)入賞事例集」に掲載されております。